ショコラ SideStory
たどり着いた家はデカイ洋館。
噂では聞いてたけど、こんなにでかいのか。
お嬢様じゃん。
なのに小遣いは300円なの?
門をくぐろうとした時、泣き叫ぶような声が聞こえてきた。
「どうしよう、桜ちゃんが!」
「落ち着いて、郁美さん」
激しく騒いでいるのは、ご夫婦かしら?
その声を聞いたとたん、「あ……」って小さくさくらちゃんが声を出して。
女の人と目が合った瞬間、彼女は猟犬のように猛ダッシュ。
さくらちゃんも、あたしの手を離して走り出した。
「いくちゃんママ!」
「桜ちゃんっ」
半泣きで桜ちゃんを抱きしめる人を見てびっくり。
めちゃくちゃ若い。可愛い感じの女の人だ。
いやだ、あたしとそんなに変わらないじゃない。
「桃ちゃん家に行くなんて嘘じゃん。どうして嘘つくの。どこ行ってたの」
「ごめんなさい、いくちゃんママ。さくらはどうしてもやりたいことがあったんです」
「あの……」
さくらちゃんが可哀想になって説明しようと口を挟むと、背中の方から人の気配がする。
走ってきたのか息を切らして、その体温が伝わってきそうなほど近くに立つ。