ショコラ SideStory
……別に、いいんだけどさ。
私はなんとなく面白くない。
やがて、サンドを食べ終えた松山くんは
「じゃあ長居すると邪魔そうだから」
と立ち上がった。
「また今度、あの子と来い」
「麻由とねー。はいはい」
「ラベルありがとな」
「サンド旨かったっす」
ひらひらと手を振って店を出る松山くん。
「アイツ昔からの常連なんだ」
と、隆二くんは私に説明しようとするけど。
もういい、聞きたくないわ。
「あ、そ」
「え? あれ? 康子さん」
言葉の素っ気なさに気づいたのか、彼はいきなり焦りだす。
「なんか怒ってる? コーヒー冷めたか? 新しいの入れようか」
「そんなんじゃないわよ」
「じゃあ何」
じゃあ何って、言うのが馬鹿みたいって思っちゃうほど些細な事よ。
だから言えない。大人としてのプライドがそれを許さない。