ショコラ SideStory

結論の言葉に、一瞬会話が止まる。
彼女の目が泳いでいるから、敢えて目は合わせない。


何が辛かったのかなんて知らないけれど。
バリバリ仕事してれば、辛いことに直面する時もあるだろう。

君を助けたいとか救いたいとか、そんな言葉をいうのは簡単だけど、それを実現できるやつなんてどのくらいいる?

言葉だけの自己満足よりも、俺は俺のやり方で君を笑わせるためにできることをしたい。

一番の武器は、甘くてほろ苦いチョコレートケーキだ。


君を癒すために、もっと旨いケーキを作りたい。

全てのケーキをそんな理由で作っている訳じゃないけれど、いつしかそんな側面を持つようになったのも事実だ。

離婚届に判を押し、自らのぬくもりで彼女を暖めることを一回でも放棄してしまった俺が彼女に与えられるのはそれだけだったから。


「……ふふ」


ケーキを半分ほど食べたところで、康子さんがようやく声をだす。それに俺は安心して、今度はちゃんと彼女を見つめた。


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