ショコラ SideStory
「サービスです」
食事と一緒に、先ほど気になっていたらしいアイシングクッキーを出してみる。
「気になられていたようだったので。味はこんな感じです。もし良かったらご注文お待ちしてます」
「ああ、ありがとう。気が利いてるねぇ」
「どなたのお誕生日ですか? お嬢さん?」
「いや、娘じゃなくて、妻の」
さらりと出た言葉には、少しの照れも混ざってなくて。
うわあ、愛妻家だぁなんて思っちゃう。
「子供が生まれてはじめての誕生日だから、お礼みたいなものを込めたいんだよね」
「え?」
子供って。娘さんは大きくなかったっけ。
「マスターに力になってもらうね」
あたしの疑問にも気付かず、彼はそう言って笑うと食事を続けた。
そのうちにお客さんに呼ばれて、次にあたしが落ち着いた頃には、葉山さんはもう精算を済ませて帰っていた。