ショコラ SideStory


 翌日、出勤して掃除をしていると、親父が一枚の紙を差し出してきた。


「詩子、これ、二十三日に渡せるように仕上げておいてくれ」

「はい? ああ、昨日の注文?」


その紙の内容をチェックして、あたしは軽く眉根を寄せる。


「でもこれじゃ気づかないんじゃないの?」

「それでいいんだと。葉山くんも結構ロマンティストだよなぁ」

「誰かさんと違ってねぇ」

「誰のことだ?」


嫌味はどうやら通じていないらしい。まあいいや。
それよりもこの注文。どうなのこの自己満足みたいなの。


「このクッキーだけなの?」

「いや、バースデーケーキと両方頼んでいった」

「ふうん」


だったら。ちょっとくらいご要望と違っても大丈夫よね?


「分かった。あたし頑張るわ」

「うん? 初注文だからってあんまり気負うなよ?」

「わかってる、わかってる」


注文が入る前はあんなに怖気づいていたけれど、いざ入ったらなんだかやる気が出てきた。
このクッキーは、人の想いを伝えるためのクッキーだ。
だったら、やっぱりちゃんと伝わるものを作りたいじゃない?


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