ショコラ SideStory


 注文日の前日である二十二日。
あたしは一度家に帰って夕食を作った後、再び店に戻り注文のクッキーを作っていた。


「詩子、どうだ?」

「うるさいなぁ。気が散るからあっち行っててよ。父さんは明日の朝、店用のケーキと一緒にバースデーケーキも焼くんでしょ? だったら夜くらいあたしに場所を貸しなさいよ。ああもう、戸締まりはあたしがするから帰って!」

「だって心配だろう」

「心配されなくても大丈夫なとこ見せたいんだから出てけ!」

「詩子っ……」


キッと睨むと、珍しく親父が怯んだ。

どうした? 
気持ち悪いわね。

親父はちょっと情けない顔で笑うと、髪をかきあげた。


「……そうだな。康子さんにも言われたんだった」

「母さんに? なに言われたのよ」

「やらせてみればいいって。俺が思うより詩子はやれるって」

「あらそう……」


認めてくれる発言は嬉しいんだけどさ。
初仕事を目の前にしている今、それを言われちゃうとかなりのプレッシャーなんですけど。


「……大丈夫か?」


いつまでも心配そうな親父の顔。一瞬、頼りたくなる気持ちも沸き上がってはくるんだけど。
母さんが言ってることは正しい。あたしはもう二十三歳。もうとっくに親離れしてもいい年なんだ。

親父の鼻っ面に人差し指を突きつけて、強がって返事をする。
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