ショコラ SideStory


「大丈夫よ。明日、見てらっしゃい!」

「分かった。今日はお前に任せる。俺は先に帰るぞ」

「うん。母さんによろしく」

「ん」


それから十分くらいで帰り支度を済ませて、親父は店を出て行った。

カラン、と寂しそうに鳴る入り口のドアベル。
静かな店で聞くこの音は、普段とは違う風に感じるんだって初めて知った。


*


 外階段を駆け下りるような音がする。

随分前に塾の子たちは帰っていったのに、宗司さんは今頃帰るのか。
階段の音が聞こえなくなったからきっとそのまま帰るんだろうって思ったのに、店のドアが勢い良く開いた。


「マスター、お疲れ様です。お先に失礼しますね」


厨房からは姿は見えないけど、確かに宗司さんの声。
いつも親父に声かけてるのかしら。律儀だなぁ。


「はい、お疲れ様ー!」


大きな声で返事をすると、「え? え?」と慌てた様子の声がした。


「う、詩子さん?」

「そうよー。珍しいでしょ」

「びっくりした。マスターは?」

「今日はお先に帰っていただきました」


かしこまってそう言うと、宗司さんは笑って厨房に入ってくる。

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