ショコラ SideStory

「あ、これ、初注文って言ってたクッキー?」

「そうよ。親父に見られない時にやりたかったの」


葉山さんの注文は、クリームサンドクッキーを一つ作り、表面に『いつもありがとう』って書くってものだ。他に、お花と赤ちゃんをイメージしたアイシングクッキーを数個一緒に入れる。


「出産祝いかなんか?」

「ううん。誕生日らしいわよ」

「そっか。なんか無難なメッセージだね。結婚してたらこんなもんかぁ」

「そうね」


確かに、どこにでもありそうなメッセージだ。
上のお子さんに見られるんだもの、変なことも書けないわよね。

あたしは、クリームを塗った方のクッキーを取り出す。


「それを挟むの?」

「うん、でも。一工夫いれるのよ」


ピンクのアイシングで、白のクリームの上に『あいしてる』と書き込む。


「うわ」


宗司さんが歓声を上げる。

実は白のアイシングで書いてくれ、と頼まれたものだ。
白のクリームに埋もれて隠れるようにして欲しいっていうオーダー。

ロマンチストな葉山さんは、渡された当人も気づかないように愛の言葉をしたためるつもりだったらしい。
だから、コレをピンクで書くのは、あたしの全くの独断だ。

更にその上に先ほどの無難なメッセージの書かれたクッキーを重ねたら出来上がり。

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