ショコラ SideStory
「あれ、隠しちゃうの?」
「そういうご要望だからね」
「ふうん」
「ちょっとずれるのはあたしの腕が悪いから」
あたしはわざと、クッキーをずらして重ねる。中のピンクのアイシングが一箇所だけ見えるように。
「……いいの?」
「いいわよ。男ってどうしてこういうの隠したがるのかしら。あたしから言わせれば、愛の言葉は口にしてナンボですけど」
宗司さんは、返事に困ったように頬をかく。
「そのほうが、絶対に嬉しいわ」
この日のために用意した、可愛いらしいラッピングボックス。
梱包材をうまく使って、ずれているのもばれないように、細心の注意を払ってクッキーを配置する。
「コレで良し!」
自己採点では九十点よ。
百点にしないのは注文通りに作らなかったからで、出来栄えだけで見れば百点だわ。
「出来た。片付けて帰ろうっと」
「手伝うよ。一緒に帰ろう?」
「うん。でも宗司さん電車でしょ? あたし待ってると遅くなるからいいわよ。一人で帰れる」
「そうじゃなくて。俺が一緒に居たいんだよ。夜に詩子さんと会えるなんてなんだかついてる」
「あ、そう?」
さらっと言われたけど、ちょっと胸がキュンとしてしまった。
どうしたのよ、珍しいな。そんなこと言われたら浮かれちゃうけど。
「……嬉しい?」
「え? ま、まあ」
「やっぱり言われたいものなんだね」
頷く宗司さんに、先ほどの自分のセリフを思い出す。
なんだ、そういうこと?
「……言わなきゃわかんないのに」
「え? 言ったらダメだった?」
「違う、別のこと!」
そんなの聞いちゃったら、あたしが言わせたみたいになるじゃないってのよ。
うもー、この鈍感男め!