ショコラ SideStory
「宗司さん、あの……」
「帰ってるのか! 詩子」
玄関から、大きな声。
嫌だ、空気の読まないおっさんが出てきたわー。
驚いて硬直する宗司さんの腕から抜け出し、あたしは親父をひと睨み。
「うるさいな、今入るわよ」
「家の前で長すぎるぞ」
「別れを惜しんで何が悪いのよ」
「あああ、あの、あの、今の」
口回ってないわよ。
全く、抱き合ってるとこ見られたからってビビってんじゃないわよ。
「じゃ、送ってくれてありがと、宗司さん。またね」
手を振って、駅の方へ歩き出す宗司さんを見送る。
名残惜しいけど、いつまでもキリがないものね。
「さて」
玄関先で若干気まずそうにしている親父の脇をすり抜ける。
「話したいなら家に入れればいいだろ」
「別れ際の会話が長引いてただけよ。あーもう、うるさいな。母さんは?」
「康子さんなら今風呂だ」
「ああもう、早く上がってー。助けてー」
ウザイ親父の面倒は、もうあたしには見きれません。