ショコラ SideStory
「しっかりして。塾を開いたのは、自分の信念に沿った教育がしたいからなんでしょ? 一保護者のクレームでくじけてる場合じゃないわ。それに、どうしたって意見が合わない人間なんて出てくるのよ。当たり前でしょ。世の中広いんだから。それでもダメだって人は、宗司さんの塾には合わないのよ」
だから、ここで落ち込んでるのは違うと思うわ。
最後の一言は、宗司さんの服の中に吸収されていった。
強い力であたしを抱きしめる腕は、ほんの少しだけ震えていて。
だけど今慰められたら、きっと泣いちゃうわよねって思うから。
あたしは彼の背中をバシバシ叩く。
「……痛いよ、詩子さん」
「気合入れてんのよ。あなたもあたしも勤務時間中なので、短時間で復活しなきゃいけないんだから」
プッと吹き出す音が耳元でする。
「じゃあ、復活の呪文でも言ってよ」
「さあ、呪文は知らないけどね」
体をすっと離して、さっきは服に触れていた唇を、彼の唇に着地させる。
「これできっと元気になるわよ!」
「……やっぱり詩子さんはすごいなぁ」
にっこり笑って、彼は一瞬あたしを抱きしめるとすぐに離した。