ショコラ SideStory
店に並ぶ気力もなく、コンビニに入り弁当を選ぶ。
『食生活はちゃんとしてね』
そういう彼女の声が頭から離れないけど。
今日はごめん。元気が全然出ない。
会計を済ますと、変に罪悪感ばかりが積み重なり、余計疲れた。
早足で家に帰ろうと歩き出すと、すれ違った女性から呼び止められる。
「宗司くんじゃない?」
詩子さんに似た、だけど彼女よりは低い声に振り向くと、年を重ねた詩子さんがいた。いや、正しくは彼女のお母さんである、康子さんだけれども。
「詩子さんのお母さん」
「康子さんって呼びなさいよ、まどろっこしい」
黒のパンツスーツ姿で、書類が入っているのか大きな鞄を持っている。俺が見るのはマスターといる時ばかりだからか、どことなく甘い雰囲気を持つ人だと思っていたけれど、今日は声も鋭く、表情もスッキリしていて、いかにも仕事をしている女性という感じだ。
「こんにちは。ああ、もうこんばんはですね。お仕事ですか?」
「ええ。もう帰るところよ。宗司くんは……これから夕飯?」
コンビニ袋を見られて、なんだか気まずい。
「ええ。まあ」
「栄養かたよるわよ。でもまあ一人暮らしだとそんなもんよね。私もそうだったわ」
「そうなんですか?」
しっかりしてそうなのに意外だ。そんな興味が俺を前のめりにさせる。
康子さんはクスリと笑うと、近くのチェーンのコーヒーショップを指さした。
「ちょっとお茶飲んでいかない? それとも、彼女の母親と二人きりは気まずいかしら?」
「いえ、そんな」
そんな言い方されて断れる男がいたら見てみたい。
誘っているようだが、強制なのだろう。なにか、気に入らないことでもしてしまっただろうか。
不安になりつつ、康子さんと共に店に入った。