ショコラ SideStory


 結局混乱しただけの俺は、そのまま家に帰り、夕飯をかっこむと布団を被った。

起きていても、詩子さんが何をしているのか気になるだけで、他の何にも集中出来ない。
もう寝てしまおう。今日いう日をまずリセットしたほうが気分が変わりそうだ。


【なんで電話出ないのよ】


彼女からのそんなメールに気づいたのは翌朝になってからだ。

携帯がいつの間にか電池切れになっていて、ふて寝したから充電器にも差し込まなかった。
昨晩の九時にかかってきていたらしい。


【ごめん、電池切れてた】


慌ててそう書いて送る。

いつもならすぐ返事が来るのに、今は来なかった。
怒らせてしまったかもしれない。
ああもうどうしてこんな風に、俺はドジばかり踏むのだろうか。

今日は早めに『ショコラ』に言って、謝らなくては。





 外にでると夏の日差しがジリジリする。今は朝の九時半。『ショコラ』の開店時間は十一時と遅めなので、
今から行けば開店前にゆっくり話ができるだろう。


 去年の今頃は採用試験の勉強ばかりしていたなぁ。詩子さんともまだ付き合っていなくて、くるくる表情の変わる彼女を見ているだけで元気がもらえるようだった。
俺の夢は少し形が変わってしまったけれど、あの場所で確かに息づいている。それは皆、詩子さんがいて励ましてくれたからだ。


「そうだよ。……昨日寝てるんじゃなかった」


もっとちゃんと、塾の掃除だったりプリント作りだったり、講義のための予習だったり、やるべきことがあったはずなのに。

一晩無駄にしたんだから、心を入れ替えよう。

なぜ彼女が俺を選んでくれたのか、それは今も分からないけれど。
塾の仕事を頑張れば、少しでも自信をつけられるかもしれない。

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