ショコラ SideStory
「遅すぎるわ。あり得ない!」
テーブルに勢いよく手をついた時のバンという音が辺りに響き、周りのテーブルでも息を飲むのがわかった。
怒られてる当人は顔を蒼白にして、口をパクパクさせている。
「ちょ、康子さん」
「社会人でしょう。遅れる時は連絡するのは礼儀よね。待たせすぎなのよ。森宮ちゃんのこともっ!」
「康子さん落ち着けって」
森宮ちゃんと隆二くんがふたりがかりで私を止めにはいる。
ええい、どうしてあなた達は落ち着いていられるのよ。
私は黙ってられないわよ。
寂しそうな顔して、待ってたじゃない。
結婚したい、子供欲しいって、泣きそうな顔で語ってたじゃない。
私は嫌よ。
森宮ちゃんを大事にしてくれないこんな男に渡したくない。
一生懸命でホントは寂しがり屋のこの子を、泣かせる男なんか許さないんだから。
「森宮ちゃんを振り回すのはやめて」
「康子さん……。落ち着いてください。私、大丈夫です」
「大丈夫じゃないでしょ。知りたいことはちゃんと聞きなさい。言いたいこともちゃんと言いなさい。このままじゃ何年たっても変わらないわよ。私は、……あなたが泣いてるのを見るのは嫌よ」
「……康子さん」
お互い目をうるませながら、見つめ合う私たち。いい雰囲気じゃない。
私のほうが森宮ちゃんを幸せに出来そうな錯覚すら覚えるわ。
「あ、あの」
香坂くんはこわごわ、私と森宮ちゃんの会話の切れ目を探ってくる。
私はギロリと香坂くんを睨んで威圧した後、森宮ちゃんに「ほら」と促した。
「でも」
森宮ちゃんは視線を彷徨わせて、「とにかく香坂さんも座ってください」と自分の隣に引き寄せる。