ショコラ SideStory
なんとなく辺りの空気も元に戻っていく中、私たちのテーブルは、鍋から出るぐつぐつという音が一番大きいというお通夜状態。
誰かが何か言おうと口を開けると、他の誰かと被ってしまい、双方が黙りこむという状況が数分続いた。
「悪かったわ。……私が口出すことじゃないってのは分かっているのよ」
結局、口火を切るのはやっぱり私。
森宮ちゃんも隆二くんも呑気すぎる。私は短気なのよ。黙っていられないわ。
「でも、見てられないの。あなた、どういうつもりで、森宮ちゃんと付き合ってるの」
「どうって、真剣ですよ」
真剣ならなぜ何の約束もしないのよ。
「康子さん。いいです。今の聞けただけで私は十分です」
なおも追撃しようとした私を、森宮ちゃんが押しとどめる。
「そうだよ。とにかく落ち着こう。康子さんと香坂さんが会うのも、十何年ぶりじゃないか。改めて紹介しましょうか。香坂さん、うちの家内です」
「ああ。……ご無沙汰してます」
「いえ。いつも主人がお世話になっております」
隆二くんに、『うちの家内』なんて紹介されるのは珍しいので、ちょっと調子を崩されてかしこまってしまう。
「香坂さん、康子さんは私の尊敬する上司でもあるんですよ」
「そうらしいね。いや、あの。……なんかホント待たせちゃってすみません」
萎縮した様子の香坂くんは、全員の顔をキョロキョロ見ながら、息を吐きだした。