ショコラ SideStory

なんとなく辺りの空気も元に戻っていく中、私たちのテーブルは、鍋から出るぐつぐつという音が一番大きいというお通夜状態。

誰かが何か言おうと口を開けると、他の誰かと被ってしまい、双方が黙りこむという状況が数分続いた。


「悪かったわ。……私が口出すことじゃないってのは分かっているのよ」


結局、口火を切るのはやっぱり私。
森宮ちゃんも隆二くんも呑気すぎる。私は短気なのよ。黙っていられないわ。


「でも、見てられないの。あなた、どういうつもりで、森宮ちゃんと付き合ってるの」

「どうって、真剣ですよ」


真剣ならなぜ何の約束もしないのよ。


「康子さん。いいです。今の聞けただけで私は十分です」


なおも追撃しようとした私を、森宮ちゃんが押しとどめる。


「そうだよ。とにかく落ち着こう。康子さんと香坂さんが会うのも、十何年ぶりじゃないか。改めて紹介しましょうか。香坂さん、うちの家内です」

「ああ。……ご無沙汰してます」

「いえ。いつも主人がお世話になっております」


隆二くんに、『うちの家内』なんて紹介されるのは珍しいので、ちょっと調子を崩されてかしこまってしまう。


「香坂さん、康子さんは私の尊敬する上司でもあるんですよ」

「そうらしいね。いや、あの。……なんかホント待たせちゃってすみません」


萎縮した様子の香坂くんは、全員の顔をキョロキョロ見ながら、息を吐きだした。

< 219 / 432 >

この作品をシェア

pagetop