ショコラ SideStory
「でも、嘘はつかない人だから。彼女のことがとても大事なんだと思うよ?」
彼の言葉には、信頼感が垣間見えたから、私も信じることにする。香坂くんの“本気”を。
「それよりさ。今日の康子さん可愛かった。部下思いじゃん」
「だって、あの子いい子なのよ。早く幸せになって欲しいのに」
「うん。きっと森宮さんも嬉しかったと思うよ?」
彼の言葉に、私はようやく胸のウズウズがおさまってきて、彼を追いかけて腕を組む。
「覚えてる?」
「なに?」
「最初のプロポーズ。妊娠したって言った私にあなたが言った言葉」
「ああ。『結婚しよう、康子さん。俺たちには何もないけど、この子がいる!』だったかな」
「そうそう。若かったわよね」
「ホントだな」
くすくす笑いながら、勢いだけで結婚した自分たちを思い出す。
苦労も一杯あったけど、それも一緒に乗り越えていくから楽しいのよ。
結婚はゴールじゃない。障害なんてこの先いくらでも発生する。
そのたびに私たちは試されていくんだわ。一緒に生きる価値のある人か、そうでないか。
「年をとっても、俺は康子さんに恋をしてる」
ポソリと続ける隆二くんの声に、心臓が波打つ。
「何年たっても驚かされるし、笑わせられるし。こんなに」
「こんなに……なに?」
「……こんなに愛おしいんだ」
ふわり、抱きしめられて。世界で一番幸せな女になる。
「ん」
目をつぶって、彼の声に酔おう。
「康子さん? あれ? 気持ち悪い? 結構飲んでたもんな」
「そうね。少し酔ったわ。眠いし」
「マジ? タクシー拾うか?」
「いいわよ、もうちょっとこのままで」
もっと愛の言葉をささやいて、存分に酔わせてよ。
森宮ちゃんの恋を後押しするつもりだったのに、自分がいい思いをしているな。
そう思うと、ちょっと笑えた。
どうか明日には、良い報告が聞けますように。