ショコラ SideStory

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 本日『ショコラ』は定休日。相も変わらず試作品作りのために一人出勤する俺は、ふと店の方を見て、ウロウロしている不審人物を見つける。


「何してんですか、香坂さん。今日遅番?」

「あ、あれ? 相本。今日は休みじゃないのか?」

「休みに店に来るのは俺の勝手でしょう」

「お前も大概仕事馬鹿だよな。なぁ、入っていいか」

「どうぞ」


断るのもなんなので、店に招き入れる。
報告かなんかを聞かせてもらえるのだろうという期待もあるし。
流石に昨日のままで終わらせるには、他人事とはいえ不完全燃焼だ。

今日は豆を挽いて無いので、昨日の残りでコーヒーを入れる。


「どうぞ」

「サンキュー。昨日すまんな」

「いいえ。お金足りました?」

「ああ大丈夫」


そう笑うと、挙動不審に辺りをキョロキョロし、手を頭にやったり首に回したり落ち着かない態度をとる。

言いたいけれど、言い出せないことがあるのだろうか。

俺はしばらく黙って見つめてみた。すると香坂さんは、考えあぐねてついに言葉を発した。


「お前の奥さん。美人だけどキツイな」

「可愛いでしょう」

「可愛いかぁ?」


疑問形で尋ね返されるのは心外だ。康子さんは可愛い。
でも別にその可愛さは俺だけが分かっていればいい。


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