ショコラ SideStory
『はい、マサさん?』
「和美、何してた?」
『アルバイトが終わったとこ。今メールしようと思ってたの』
そういえば、家庭教師のバイトをしてるって言ってたな。
部活の忙しい高校生で時間変更が結構あって困るって言っていたような。
「そっか。お疲れ」
『詩子さんのフラッペ食べたいなぁ。あれ美味しいよねぇ』
和美も詩子のほうがいいのか。
くだらないやっかみだということは分かっているが、彼女の欲したものが俺のケーキじゃなく詩子のフラッペだったことに不満が湧き上がる。
「じゃあ店に食べに来いよ、昼間」
『うん。マサさんにも会いたい。なんか最近時間合わないもんね』
「そうだな」
とってつけたみたいに、俺に会いたいとか言わなくてもいいよ。
喉元までこみ上げて来るのは、変な僻み根性だ。
俺のケーキは、例えばディスプレイされている時なら歓声を上げてもらえるだろう。
だけどこうして、なんでもないときに思い出してもらえるのか?
もっと俺だけの何かを、俺は創りださなきゃいけないんじゃないのか?
『明日、ちょっとだけ抜けて食べに行くね』
「うん。待ってる」
電話を切ってから、結局肝心な話を何もしなかったことに気づく。
俺は彼女の話を聞いてやるために電話したんじゃなかったのか。
もし悩みがあるんだったら……と一言言うだけなのになぜこうなる。
うまく立ち振る舞えない自分にものすごくイライラする。