ショコラ SideStory
しかし、数日後、爆弾は思わぬ形でやって来たのだ。
その日は月曜日。
カランという鈴の音につられるように入口に目をやると、長い髪をサイドで一纏めにした、おとなしい感じの女性が入ってきた。
ふんわりしたニットと茶色のロングスカートを身につけた一見お嬢様風のスタイル。背はあたしより低く特徴的なところがない顔立ちで街で見かけたとしても目に止まりにくい感じのタイプだ。
それでもあたしの視線がその彼女に釘付けになったのは、彼女が先日宗司さんと一緒に居た小さな女の子のお母さんだったからだ。
こうしてみると若い。三十歳にはなっていないかも知れない。
一人で居るととても小学生のお子さんが居るなんて見えない。
「あの、すみません。アイシングクッキーってこちらで?」
「あ、はい! いらっしゃいませ。こちらでご注文受け付けます」
慌ててレジ前に向かうあたし。
彼女はチラチラとあたしを伺うと、照れたように呟いた。
「こちらのクッキーで告白すると叶うって娘に聞いて。……恥ずかしいわね、いい年して」
「え? いえいえ、お客様お若いですよ。お子さんいらっしゃるんですか?」
知ってるけど。ここは知らぬ存ぜぬで通そう。
彼女は照れたように微笑んだ。