ショコラ SideStory
仕事だって。
作るよりもウェイトレスのほうが確実に客を呼べるって思ったから。
だったら繊細な作業を必死に練習するよりは、店の中で笑顔を振りまいていたほうがいいって割り切ってた。
実際、それは成功だったといえるだろう。
客は増えて店の経営は安定した。
でも今思えば、あたしはあの時から、パティシエとしての道を諦めてしまっていたんだわ。
……なんか。
こうして改めて考えてみると、実はあたしのほうが諦めが早かったりするのかな。
何年も何年も先生になるために頑張れた宗司さん。
今だって、少し方向を変えただけで基本は変わっていない。
自らの理想の塾を軌道に乗せるために奮闘してる。
宗司さんは、長いスパンで物事に取り組める人だ。
あたしとのことも、多分じっくり長丁場で考えていてくれたんだろう。
なのにあたし、一週間なんて短い期限を切ってしまった。
彼の気持ちなんか考えもせずに。
「……あたしは、元気づけたいだけなんだけどね」
「元気はつけてるんじゃない? いつも。宗司くんデレデレに見えるけど」
「それがいろいろあってねー」
もう全部話しちゃおうかな。
でももし「謝りなさいよ」とか言われたら余計謝りたくなくなるかも。
母さんのことは好きだけど、親の態度で言われたら反発しちゃう気がする。
ああ実はあたし、思春期に放っておかれたの根に持ってるのかな。
今日は自分の嫌な部分ばっかり浮き彫りになって嫌になっちゃう。