ショコラ SideStory

翌朝、あたしは朝食を作りながらクッキーも焼いた。
甘い匂いがキッチンに立ち込めて、これが昼時なら食欲が沸くところだろうけど、朝なので匂いだけでお腹いっぱいって感じ。

冷ます間に朝食の仕上げをして、アイシングも作る。

でもいざ文字入れしようと思ったら、気持ちがまとまらない。

その内に起き出してきた親父と母さんに朝食を出し、二人が出て行ってからも、あたしはクッキーとにらめっこだ。

宗司さんに渡すクッキー。
あたしは彼に何を伝えたいんだろう。

『結婚して』は勢いのセリフだった。
だけど気持ちに嘘はなくて、しょげてる顔をみているくらいなら、あたしが笑わせてあげるわよって思って。

喜んでくれるかと思ったからこそ、戸惑われてイライラした。

そうよね。
結婚がしたいわけじゃないのよ。
いや、したくないわけでもないけど。

ただ、彼が落ち込んでいたのが嫌だっただけ。


お願い。
元気でいて。笑っていて。

あたし、あなたの元気の素になりたいのよ。

『元気出して』

あたしはあなたに、そう言いたいんだわ。


宗司さんに渡せそうなくらい綺麗に出来たクッキーは三枚。

お花型にニコちゃんマークの絵柄を書き込んだものと、『Smile』の文字。
そして最後に、『I love you』と書いて、同じ色のアイシングで塗りつぶした。

親父が母さんのためにケーキを作るように、
母さんが親父のためにポトフを作るように、
あたしは宗司さんにクッキーを作る。

そこに潜んでいる愛情に気付かれなくてもいい。


恋をしているんだと思っていた。
愛なんて、気恥ずかしいことはあたしにはまだまだ無理だって。

でも多分だけど

あたしはあなたを愛しているんだわ。


< 287 / 432 >

この作品をシェア

pagetop