ショコラ SideStory
翌朝、あたしは朝食を作りながらクッキーも焼いた。
甘い匂いがキッチンに立ち込めて、これが昼時なら食欲が沸くところだろうけど、朝なので匂いだけでお腹いっぱいって感じ。
冷ます間に朝食の仕上げをして、アイシングも作る。
でもいざ文字入れしようと思ったら、気持ちがまとまらない。
その内に起き出してきた親父と母さんに朝食を出し、二人が出て行ってからも、あたしはクッキーとにらめっこだ。
宗司さんに渡すクッキー。
あたしは彼に何を伝えたいんだろう。
『結婚して』は勢いのセリフだった。
だけど気持ちに嘘はなくて、しょげてる顔をみているくらいなら、あたしが笑わせてあげるわよって思って。
喜んでくれるかと思ったからこそ、戸惑われてイライラした。
そうよね。
結婚がしたいわけじゃないのよ。
いや、したくないわけでもないけど。
ただ、彼が落ち込んでいたのが嫌だっただけ。
お願い。
元気でいて。笑っていて。
あたし、あなたの元気の素になりたいのよ。
『元気出して』
あたしはあなたに、そう言いたいんだわ。
宗司さんに渡せそうなくらい綺麗に出来たクッキーは三枚。
お花型にニコちゃんマークの絵柄を書き込んだものと、『Smile』の文字。
そして最後に、『I love you』と書いて、同じ色のアイシングで塗りつぶした。
親父が母さんのためにケーキを作るように、
母さんが親父のためにポトフを作るように、
あたしは宗司さんにクッキーを作る。
そこに潜んでいる愛情に気付かれなくてもいい。
恋をしているんだと思っていた。
愛なんて、気恥ずかしいことはあたしにはまだまだ無理だって。
でも多分だけど
あたしはあなたを愛しているんだわ。