ショコラ SideStory
親父は宗司さんから視線をずらさずに、まくしたてた。
「宗司。お前、俺に言ったよな。来年までに軌道に乗せるって、それから詩子を迎えにくるって。あれはつい数ヶ月前のことだぞ?」
「いいました。それを撤回しに来たんです。マスター、俺の話ちゃんと聞いてください」
「聞けるか。詩子が欲しいだと? お前この数ヶ月で何が出来たよ。商売はそんなに甘いもんじゃない。そんな男に詩子を任せられるわけ無いだろ」
飛び交う会話に、驚く。
昨日あたしがあんなこと言ったから?
だから宗司さん、親父を説得しにきたの?
「俺だってわかってます。今のままじゃ詩子さんに苦労かけるだけだし、マスターに対してだって嘘つきになる。教育産業は信用が一番だって分かってる。今俺がしていることは、マスターから信用を失う行為だ。
でも、俺は優柔不断だけど、失くしちゃいけないものが何かぐらいは分かるんです。俺には、詩子さんが必要なんです」
大きな声で言い切って、宗司さんは親父に向けて厚さ三ミリほどの紙の束を差し出した。
「一晩かけてその理由と、将来の展望をまとめてきました。読んでください」
レポート提出って、学生じゃないのよって思うけど。
これ、一日で書いたの?
あたし、レポート用紙一枚書くだけで一時間はかかるけど、この厚さを書こうと思ったら何時間かかるのよ。
「俺はどんくさいんです。言いたいことをまとめるのにも、実行に移すのにも時間がかかるんです。だから、今の時点でできることをしてきました」
彼はそれを親父に押し付けると、あたしの方を向いた。
あ、服にまで生クリームついてる。