ショコラ SideStory
「詩子さん」
「もういい。母さんに賛成してもらわなくても結構。あたし、家を出るから。宗司さんと暮らす」
「なにいっ!」
飛びつくように反応するのは親父。
母さんはといえは、眉をぴくりとも動かさない。
「あらそう。やってみればどう」
「やってみるわよ、言われなくても」
「ちょ、詩子さ……」
「荷物まとめてくる。ちょっと待ってて、宗司さん」
有無を言わさずあたしがリビングを出ると、「康子さん、聞いてください」とまだ母さんを説得しようとする宗司さんの声が背中に聞こえた。
今回は完全にキレたわ、あたし。
なんなのよ、自分のことは棚に上げてさ。
思えば母さんはいつも勝手なのよ。
自分の好きなように仕事して、恋愛して。
避妊もしないであたしを作ったかと思えば、アッサリ結婚して。
なのに、親父と喧嘩して離婚でしょ?
思春期のあたしをほったらかしにして仕事に明け暮れてたかと思いきゃ今頃になって再婚とかさ。
勝手よ。勝手すぎる。
それでも、これまであたしとの関係は良好だった。
母さんがいつもあたしの理解者でいてくれたからだ。
でも、今回のことですっかり嫌になった。
やっぱり母さんは自由人でワガママよ。
あたしが思い通りにならないからってあんな言い方するなんて。
部屋に入り、着替えと化粧品、そして携帯の充電器を詰め込む。
とりあえず宗司さんの部屋に転がり込むなら、ひと通り生活必需品はあるはずだから、あたし自身のものだけを持てばいいはずだ。