ショコラ SideStory


「松川さんの塾はそんなに逼迫してるんですか?」

「んー。でも賃貸料は安いのよ。親父が貸してるわけだから。塾生は多いとは言えないけど、教師が宗司さん一人ってことを考えれば決して少なくも無いわ。単純に、今年は一年目だから機材や何や揃えるのに赤字ってだけ。
そりゃ、同じ年のサラリーマンに比べれば格段に低いだろうけど」


でも暮らせないほどじゃない。
自営である以上、いつまでも“安定”である保証はどこにもない。

どこまでいっても、母さんの求めるものなんて手にはいらないんじゃないかしら。


「もういっそ強行突破しようかな。親を見習って」

「ゴホッ」


聞き耳を立てていたのか、マサがいきなりむせた。
あたしは眉を寄せ、「冗談よ」と返す。

できちゃった結婚とか、あたしはしてもいいけど、宗司さんが嫌がるに決まっているもの。

彼はまだ母さんを説得することを諦めていない。
どうなっちゃうのかと思うと、あたしのため息も止まらないってもんだわ。


「私は詩子さん達の味方ですから」


にっこり笑って帰っていく和美ちゃんに癒やされつつ、チラリとマサを見上げる。


「マサはどっちの味方?」

「俺は中立。敢えて言うならマスターの味方?」

「あっそ」


じゃあ母さん側じゃん。
親父が母さんの敵に回るわけないもの。

まあいいけどさ。陣取り合戦でも無いんだから味方が多いからいいって訳でもないし?

ただ。
なんだか心細いってだけよ。


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