ショコラ SideStory


 そしてクリスマスが終わり、なんとなく一息つく頃。
あたしは連休をもらって、宗司さんの実家へと一泊で出かけた。


「新潟かぁ」

「田舎でびっくりするよ、詩子さん」

「雪が一杯?」

「そうだね。五十センチとか平気で降る。雪かきで体力つくよ」


新幹線から見る景色は、あたしが見たことのない広い風景。

建物はあるけど、とにかく視界が広い。高い建物がないからかな。空ってこんなに高いの? って思う。
いつも景色の一部でしか無い山もこんなに大きかったんだ。


「実家には両親とばあちゃんと兄貴がいるんだ」

「宗司さん、お兄さんいたんだ」

「うん。今三十一かな。農協勤務。でもチャラチャラしてるから、詩子さんあんまり話さなくていいよ」

「なにそれ」


チャラチャラしてるとか、宗司さんからは想像つかないな。
宗司さんが田舎生まれってのはなんとなく納得いくけど。

降り立った駅は、さすがに年末ということもあって混み合ってはいたけれど、都会の通勤ラッシュより緩やかだ。
あたしは、構内から出た途端に感じた澄んだ空気と眼前に広がる空に圧倒されて大きく息をついた。

自然ってすごいんだ。
虚飾とか体面とかそういったものを、なんだか無条件に剥ぎ取られる感じ。

あたしってこんなにちっぽけだったんだ。

自分が凄く小さな存在だって思えたとき、宗司さんがあたしの手を掴んだ。その暖かさに急に現実感が戻ってくる。


「行こ」

「……うん」


消えてしまいそうなくらいちっぽけでも確かに存在してるんだって、隣を歩く人が教えてくれる。

一緒になるって、二人で生きてるのを確かめ合うことなのかも知れないね。

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