ショコラ SideStory
そこから、地方鉄道に乗り換えて、更に数十分。
たどり着いた駅で、手を振る年配の女性の姿が見えた。
暖かそうなダウンジャケットに、二重になっていそうなダボッとしたズボン。
髪は短く癖があり、ほっぺが驚くくらい赤い。
「宗司、こっちこっち」
「あ、母さん」
そう言われて、途端に緊張しちゃう。
急に体が硬くなったみたいに、右足が右手と一緒にでそうになる。
「あらぁ、まあまあ。なんけ、たまげたぁ。こんなかわいいお嬢さん」
「母さん、落ち着いてよ。詩子さん、ウチの母。母さん、こちらが電話で話した相本詩子さん」
「はじめまして。相本詩子です」
あたしは頭をペコリと下げる。
お母さんはまだ「あらあら」言いながら、赤いほっぺに手を当ててはしゃいでいた。
「宗司、嘘ついてないかね。おまんみたいなんがこんな綺麗なお嬢さんと結婚なんて、何かの間違いじゃないかね」
「俺も嘘みたいって思うけど本当。ね?」
振り向かれて、あたしもドキドキしながら頷く。
お母さんはあたしのことどう思うのかな。
「おまん、あんちゃに気ぃつけんとね」
「わかってるよ。今日おるん?」
「おるおる。宗司が嫁さん連れてくるなら遊びに行ってる場合じゃねぇってせって朝からうるさいねや」
「あーそいが」
「まあ、立ち話もなんやし、家に行がんかね。つかんたろう、詩子さん。よく来なったねぇ」
「え、えと?」
「疲れたでしょって。方言聞き取れないんでしょう。俺に聞いてよ」
「あら、そやねぇ。方言せってるつもりないんだけどねぇ」
心が軽くなるような優しい笑顔で、お母さんは笑う。
胸がキューッとなって、あたしはなぜか後ろめたいような気分になった。