ショコラ SideStory


「これ、うちの店で作っているお菓子なんです。もし良かったら召し上がってください」


お土産は何にしようか迷ったけれど、マサが焼くマフィンと、自分で焼いたクッキーにした。
仕事ぶりをみてもらうのが、一番あたしを分かってもらえるかなと思って。


「お菓子屋さんなんが?」

「メインは接客なんですが、最近はアイシングクッキーの担当をしています。こっちのクッキーは私が作ったんです」

「まあ、すごいなぁ。うちは男ばかやし、手作りのお菓子なんて食ったこと無いさね」


ちょっと大げさなくらいに喜ばれ、恥ずかしくなる。
その後、改めて宗司さんとの結婚の意志を伝えると、ご両親とも快く承諾してくれた。


「宗司は結婚なんて遅かろうねぇって思っとったから、たまげてさ。でもいかった。都会にいると思うと心配だし、一人じゃねくなるなららっくりしたね」


ちらり、宗司さんをみると、らっくりは安心ってこと、と教えてくれた。


「不束者ですがよろしくお願いします」


あたしもほっとしてお決まりの挨拶で頭を下げると、そこからは直ぐに歓談に変わった。
普段は畑仕事をしているというおばあさんは、腰は曲がっていてもシャキシャキと動くし、お母さんは「こんなが口にあうかねぇ」といいながら、沢山の料理を用意してくれた。


「このお漬物美味しいです」

「あれぇ、若ぇ人が漬物とか喜ぶんかね」

「あたし、お漬物大好きです」


お漬物と、刺し身はお酒に合って美味しいし、畑で作ったという大根で作られたサラダは、驚くくらいシャキシャキして野菜なのに甘かった。


「ほら、詩子ちゃん飲んじゃって!」


盛り上げ役のお兄さんのお陰で、場が白けることは一度としてなく、あたしは凄く楽しくその夜を迎えた。

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