ショコラ SideStory

「美味しそう」

「どうぞ。今年のはケーキと下のクッキー部分を同時に食べるのがオススメかな」


カツン、カツンとフォークが皿とぶつかる音、「んん! 美味しいわ」という歓声。

なんか、母さんが素直。
二人の間の空気が優しいというか、離婚する直前みたいなトゲトゲした空気はもう無いのね。


「今の私はこんな味?」

「そうだね。上と下、バラバラに食べてご覧よ」

「ええ。……あら。ちょっとさっぱりしすぎね。甘さも控えめだわ。逆に下は甘すぎる」

「今の康子さんはこんな感じ」


少しの沈黙。
あたしは宗司さんと店の方を交互に見つめる。


「……なによ」

「君は辛い時ほど笑うから。でもそろそろ辞めよう。詩子たちは大丈夫だよ」


いつもの親父とは思えないくらい落ち着いた声。

怯んだような母さんの声は、一瞬だけ潤んだかと思ったけど、続けてまくし立てた時にはいつものしっかりした口調に戻っていた。


「勢いで結婚するときは、共通の目的か敵がいたほうがいいのよ。私達には両方いた。詩子と反対する両親。だから二人で頑張れたでしょ? 
親の反対無くなってからはどう? 私達喧嘩ばかりした。最後には離婚。敵がいなくなったから、お互いが敵になっていったのよ。……悪いけど、宗司くんも詩子もまだまだ頼りないわ。だったら一人くらい共通の敵がいた方がいい」

「だったら俺がなるよ。ゴネるのは得意だ」

「あなたはダメよ。詩子の雇い主だもの。職場で肩身が狭いなんて可哀想だわ」

「康子さんに反対されて落ち込んでる詩子を見てるのも辛いんだよ」

「それくらい我慢しなさいよ。あなたも詩子の親でしょ」


……なによ、それ。
あたしのこと思って、反対してるみたいなそんな言い方。

そんなの頼んでないよ。

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