ショコラ SideStory
「試作品として三種類作ってみました。もちろん、あくまでもご提案なので、他にご要望があれば聞かせてもらいたいんですけど。ラッピングはこんな感じに、透明な袋にリボンをつけて仕上げるのでどうでしょう」
「そうね、絵が見えたほうがかわいいものね。触ってもいいかしら」
「どうぞ。試食用ですから召し上がって下さい」
森宮さんのマニキュアの綺麗に塗られた爪が、花びらの模様をなぞるように動く。
それは結構な自信作よ。
時間だって凄くかかったし、でも一番華やかで気に入っている。
「これ、ホント可愛い……けど、凄く凝ってるから高そうね」
それを聞かれるとギクリとする。
アイシングを重ねて花びらを作る花型クッキーは、時間も材料費もかかるので一枚で三百円になってしまう。
「そ、そうですね。これだと一枚で三百円です」
「そうかぁ。じゃあこれだと一枚しか入れられないなぁ。単価三百円で予算をくんでるの。一枚っていうのも味気ないし、できれば二枚くらいは入れたいなと思ってるんだけど」
「でしたら、こちらのハートの方がいいかもしれませんね」
でも、一番気合の入ったお花クッキーを気に入ってくれた森宮さんに、ハートのはどう映るだろう。
こちらはサイズも小さめで一枚百二十円で出せるけど、お花のクッキーに比べれば子供だましのようにも見える。
「そうねぇ、どうしようかなぁ」
目の前で悩ましげに考えこまれて、心臓が波打ち始める。
値段の情報を先に貰わないのは失敗だった。