ショコラ SideStory
そこへ、カランと入り口の鈴の音がして、皆の視線がそちらに集まる。
「悪い、遅れた」
香坂さんが、肩で息をしながら入ってきた。
ダウンコートから伸びる長い足。皺のよった、だけど整った顔。
職場であるロイヤルホテルでは調理服に着替えるので、私服はラフなものでいいらしい。
チラリと時計を確認すると二十一時三十分。予定よりは三十分の遅刻だ。
森宮さんはホッとしたように息を吐き出し、「遅いですよ」とさらっと言う。
香坂さんは遅刻常習犯だと言っていたし、もう慣れっこなのだろう。
「ごめん。相本、俺にも珈琲。やあ詩子ちゃん、元気?」
「ご無沙汰してます」
香坂さんとは、親父が彼と同じ職場で働いていた頃から顔見知りだ。
昔からイケメンだなと思ってはいたけど、今はどっちかと言うと渋いおじさんって感じ。
親父の先輩なんだから四十代も後半なのよね。
これで初婚っていうんだからなんだかなー。
「香坂さんったら、ドレス決める時も遅れてきたんですよ。これじゃあ来週の打ち合わせだって怪しいものです」
「いや、あの日は急に一人休んで忙しくなったんだって。説明しただろ」
むくれたようにそっぽを向いて親父に愚痴をこぼす森宮さんに、慌てて弁解を始める香坂さん。
……なんか、見ているだけで心配になる二人だなぁ。
これから結婚しようって人たちがこんなんで大丈夫なの?