ショコラ SideStory
「まあ、決めごとが多い時期は揉めるもんだよ。そもそもさ、結婚決めてから半年後の挙式ってかなりスピーディなんだよ。式場にも無理言ってるだろうし、全部希望通りというわけにはいかないんだろ。……森宮さんの年齢のことも考えて、香坂さんなりに色々頑張ったんだとは思うよ。自分のホテルにやることにしたのも、タイミングよくキャンセルが出たからだって聞いたし」
親父がこっそり教えてくれる。まあそう考えれば、香坂さんも頑張ってる……のか?
「まあ、決めてから一年くらいかけてするものだっていうものね」
「それでなくとも、“結婚式”ってのは、男女で温度差が出るもんだろ」
たしかに、女の方はノリ気なのに、男は面倒臭がるとかいう愚痴は、定番だもんなぁ。
「まあ俺達が気にすることじゃないよ」
親父にそう言われて、それ以上は突っ込めなかったけれど、あたしの中にはなんとなく釈然としないものが残った。
パスタを食べ終えて片付けようとしたら、親父は追い出すように手を振って、宗司さんにあたしを送るように言う。
「デザイン考えるんだろ。片付けは俺がするから先に帰っていいぞ。康子さん用のパスタも持ち帰ってくれ」
「うん。……ありがとう」
「じゃあお先です、マスター」
宗司さんは、あたしがコートを着こむのを待ってから、背中を押すようにして隣を歩いてくれる。
親父は小うるさいことも言わずに送り出してくれた。
ふたりで帰れるように、親父が気を使ってくれたのかと思うと不思議な気分だ。
あんなに過保護だったのに、人って変わるものなのねぇ。