ショコラ SideStory
でもこれって、それくらい宗司さんのことを認めてくれているってことなんだ。
あたしが、そう遠くない未来に結婚する人。一緒に生きていこうと決めた人。あたしだけじゃなくて、親父や母さんもそう信じてくれている人。
「詩子さん」
「なに?」
「どうしたの? なんか静かだけど」
夜道で肩を並べて歩きながら、彼は不思議そうにあたしを覗きこむ。
普段なら、あたしがその日の出来事を言いたいだけまくしたてているとあっという間に着いちゃうもんね。
「クッキーのデザイン。また考えなきゃ」
「だめだった?」
「うーん。そうね。コンセプトが違ったのかなって思う。あたしは、ただただ幸せな感じが伝わればいいなって思ったんだけど、男の人ってそうじゃないのね。招待客に感謝を伝えるられるものがいいんだって。宗司さん、そういうのわかる?」
宗司さんは、きょとんという顔をして次に苦笑したように笑ってみせた。
「……ちょっとは分かるかなぁ。世間体……というと聞こえが悪いけど。自分たちがしっかりふたりで生きていきますってのは伝えたいって思うかもね。特に、結婚相手が人も羨むような人だった時は、意地もあるかな。……これだけの人を捕まえたんだから、絶対幸せにしますって伝えたいし、こんな男で大丈夫かなんて思われたくないし」
「ふうん。……そんな風に思うんだ」
「俺も思うよ。詩子さんをもらうんだから、しっかりしなきゃって」
「変なの。あたしはそのままの宗司さんがいいのに」
「それは嬉しいけど。でもやっぱ、俺にもちょっとはプライドくらいある」
それはあたしにはない感覚だった。ふたりが幸せならそれでいい、他人にどう思われたって構わない。
今もそう思っているけど、男の人にはそれだけじゃない気持ちもあるんだなぁ。
「わかった。招待客に誇れるようなクッキー、考えてみる」
「頑張れ、詩子さん」
「うん」
彼の励ましが嬉しくて、そっと手を伸ばして指を握る。
宗司さんはその手を持ち替えて、しっかり握ってくれた。
温かさになんだか力がもらえるみたい。