ショコラ SideStory
そのまま、名残惜しくて家の前でずっと話していたら、コツコツとヒールの音を鳴らす人影が近づいてきた。
「あら、詩子に宗司くん。寒いのにこんなトコでなにしてるのよ。中入れば」
トレンチコートから細い足を寒さにも負けずに晒しているのは、母さんだ。
「いえ、俺は送ってきただけなので」
「そう? まあなんでもいいわ。疲れたー」
気を利かしたのか母さんはそのまま先に家の中へと入っていった。
あたしと宗司さんは顔を見合わせて同じタイミングで笑い出した。
「じゃあ、お休み、詩子さん」
「うん。宗司さんも気をつけてね」
一歩前へ進んだ彼の前髪が私の目元にかかり、触れるだけのキスを落として、離れていく。
幸せな余韻に包まれながら、あたしは彼の姿が小さくなるのを見送った。
*
「母さん、夕食あるわよー」
家に入り、親父から預かったタッパを渡す。
「おお、待ってたわよ。お腹すいたわ」
お湯を沸かしてカップスープを淹れようとしている母さんが、目を光らせた。そのまま皿に移してレンジへ投入する。
「……そういえばさ、母さん。森宮さんっていくつ?」
「森宮ちゃん? ……えっと、三十三……いや、三十四になったんだったな。確か」
「あ、そんなに上なんだ。三十なったばかりくらいかと思ってた」
「若くみえるわよね。でも本人は結構気にしてる。夏が誕生日なのよ。三十五歳になる前に結婚したいって悩んでいたわよ」
「そうなんだ」