ショコラ SideStory

そのまま、名残惜しくて家の前でずっと話していたら、コツコツとヒールの音を鳴らす人影が近づいてきた。


「あら、詩子に宗司くん。寒いのにこんなトコでなにしてるのよ。中入れば」


トレンチコートから細い足を寒さにも負けずに晒しているのは、母さんだ。


「いえ、俺は送ってきただけなので」

「そう? まあなんでもいいわ。疲れたー」


気を利かしたのか母さんはそのまま先に家の中へと入っていった。
あたしと宗司さんは顔を見合わせて同じタイミングで笑い出した。


「じゃあ、お休み、詩子さん」

「うん。宗司さんも気をつけてね」


一歩前へ進んだ彼の前髪が私の目元にかかり、触れるだけのキスを落として、離れていく。
幸せな余韻に包まれながら、あたしは彼の姿が小さくなるのを見送った。






「母さん、夕食あるわよー」


家に入り、親父から預かったタッパを渡す。


「おお、待ってたわよ。お腹すいたわ」


お湯を沸かしてカップスープを淹れようとしている母さんが、目を光らせた。そのまま皿に移してレンジへ投入する。


「……そういえばさ、母さん。森宮さんっていくつ?」

「森宮ちゃん? ……えっと、三十三……いや、三十四になったんだったな。確か」

「あ、そんなに上なんだ。三十なったばかりくらいかと思ってた」

「若くみえるわよね。でも本人は結構気にしてる。夏が誕生日なのよ。三十五歳になる前に結婚したいって悩んでいたわよ」

「そうなんだ」

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