ショコラ SideStory
「もうちょっと考えさせてくれる?」
「うん。もちろん」
早く一緒に暮らしたいけど、今の生活がそう不満というわけでもない。
なにせ、あたしたちは職場も同じ建物の上下だから毎日のように顔を合わすし。
しばらく静かに歩いていたら、吹っ切れたように宗司さんが顔をあげた。
「ところでさ。時間あるなら神社に行ってもいいかな」
「神社?」
「そう。この間の模試の結果出て、皆、志望校決まったから、絵馬を掛けてこようと思って」
電車で数駅のところに、学問の神様を祀っているところがあるらしい。
遠くの有名な神社もいいけれど、同じ土地にいる神様に願いをかけたほうが届きそうな気がするし、と宗司さんは笑った。
「神頼みか。効果ある?」
「結局は自分の力だけど、気分的にいいよ。なんでもやらないよりはやっておいたほうがいいし、願いって声に出すとちゃんと形になるような気がする」
宗司さんが鞄から出したのは、絵馬だ。
【塾生全員、志望校合格お願いします】と書かれた大きなもの。
その下に、違う筆跡で名前と志望校が順々に書かれている。きっと塾の子一人ひとりに書かせたのね。
「願いを絵馬に、かぁ」
その時、頭に閃いたものがあった。
「あ、思いついたかも」
「何を?」
「……できたら見せる! 宗司さんありがと!」
彼は目をパチクリさせてあたしを眺めると、「なんかよくわからないけど」と、口元にいつもの穏やかな笑みを浮かべる。
「神社の近くに美味しいラーメン屋さんもあるんだ。先にそっちでお昼食べようか」
「うん!」
その情報にますますごきげんになって、宗司さんを引っ張るように歩き出した。