ショコラ SideStory

「あ、そういう意味ではなかったんですけど」


軽く親父をにらんで慌てて弁明すると、香坂さんは右手を振って苦笑した。


「いいよ、わかってる。相本余計な事言うなよ。色のバランスがいいよね。な、詩子ちゃん。……クローバーの葉をさ、なんで若草色だけじゃなくて白も入れたか聞いてもいい?」


それを聞くということは、香坂さんは気づいているのだろう。
あたしは、息を詰めて見つめている森宮さんに尋ねた。


「この色、見覚えありません?」

「え?」


彼女はもう一度じっくりクッキーを見つめ、やがて思いついたように息を飲むと、目をぱちぱちさせてあたしを見返した。


「お色直しの、ドレスの色……?」

「そうです。先週見せていただいたドレスの写真、森宮さんにとても似合っていたので、その色味を出したいなーと思って」


幸せな結婚式を、帰ってからも思い出せるように。
クローバーになぞらえれば、春が来るたびに彼女はそれを思い出すだろう。

森宮さんは手を口元で覆って息を吸い込んだ。
そして、目を潤ませてとびきりの笑顔を見せてくれる。


「……嬉しい。これがいい。ね、これにしましょう、香坂さん」


ぎゅっと香坂さんの服の袖をつかむ森宮さんに、彼は愛おしそうにまなじりを細める。


「うん。そうだな。……凄いじゃん、詩子ちゃん。俺の気持ちも、綺夏の気持ちも汲んでくれたんだな」

「ありがとうございます」


二人にそう言ってもらえて、あたしはようやくホッと胸をなでおろす。
何とか満足してもらえたみたい……かな。


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