ショコラ SideStory
あなたは、離れても平気なの?
今まで毎日顔を見ていたのに、声しか聴けなくなるのよ?
あたしは、……あたしは不安だ。
思えば、今まで付き合った人は宗司さんしかいない。
離れても好きでいてもらえるかなんてわからないじゃない。
はじめてちゃんと好きになった人に好きになってもらえて、結婚したいって言ったらいいよって言ってもらえて、あたしは安心しきっていた。
おとぎ話の世界のように、“ふたりは幸せに暮らしました”で終われるんだと思っていた。
離れ離れになるような未来は、予測してなかったもの。
「……っ」
気が付けば、眼から水滴が零れ落ちていた。
宗司さんが焦った顔であたしを見つめ続けている。
嘘みたいだ。
この状況で泣くのが、あたしの方だなんて。
宗司さんが慌てふためいて、あたしがなだめる方だと思っていたのに、現実は全く反対の構図になっている。
「詩子さん、泣かないで」
「だって」
溢れ出したものは止まらない。内面親父女子だったはずのあたしが、こんな乙女チックに泣くなんて。
あり得ないことばかりで、頭がパニックになる。
恥ずかしいよ、いつからこんなに泣き虫になったの。
「どうせ、宗司さんは、あたしと離れても平気だもんね?」
「ええっ? ちょっ、詩子さん!」
冷たい言葉を吐いて、店を飛び出した。
いつもの道を進みそうになって、この顔で家になんかいけないじゃん、と慌てて違う方向に曲がる。
やがて公営団地の一角にある公園が見えてきた。