ショコラ SideStory


「おーい、康子さん」


私を探す声にハッと正気に戻り、森宮ちゃんの控室を後にした。


「もうすぐ始まるよ。結婚式」

「うん。森宮ちゃん、すごくきれいだったわよ」

「それは楽しみだな」


ふと、隆二くんの服の裾に粉っぽいものがついているのに気づいて払う。


「どうしたの、これ」

「香坂さんがまだ着替えてなくてさ。さすがに叱ってきた」

「もしかして厨房にいたの?」

「うん。まだケーキの仕上げしてた。気持ちはわかるんだけど、新郎が遅刻した方が彼女を悲しませるってわかんないのかなあの人……」

「……一生分からないんじゃないかしらね」


そんなんだから、四十八歳で初婚なんだろうと思う。
でも、遅刻でも結婚できるんならまだいいんだわ。

葉擦れの音に似たシャッター音に目を向けると、福ちゃんが式場内に入場する人の写真を順々に撮っていた。

愛想よく語り掛け、笑顔を引き出すそのやり口。
いい男だと思うんだけどねぇ。

……遅刻でも、しないよりいいのよ。多分ね。



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