ショコラ SideStory

もし私たちがちゃんと結婚式を挙げていたとしたら、あんな子供みたいな理由では別れなかったかもしれない。
その前に、思いとどまることができたかもと今は思う。

やがて祝辞が順々に始まり、私も例に倣ってそれを行う。

緊張はするけど、人前で話すのはそれなりに場数を踏んでいる。
まして彼女は仕事もできるから、褒め言葉には困らない。

一仕事を終え、はーっと息をつく暇もなく、乾杯の音頭がとられた。


「お疲れ、康子さん、いいスピーチだったよ」

「久々だから緊張したわ」


隆二くんと杯を合わせたところで、フラッシュが私を襲う。


「福ちゃんね」

「森宮ちゃんに頼まれてんだよ。ぜひご夫婦のベストショットもとってくれって」

「今日の主役はあっちよ。いっぱい撮ってあげてよ。ケーキ入刀の時とか、いいの撮ってよね」

「ハイハイ。分かってるよ」

「それと福ちゃん」

「なんだ?」

「いい女も物色しなよ。福ちゃんがいつまでもひとりでいるの、なんか勿体ない」


福ちゃんは、ファインダーから視線をずらして私を凝視する。
なによ、その微妙な顔。これでも心配してやってるっていうのに。


「まあ、……いい出会いがあればな」

「あるわよ。福ちゃんは最初っからないって思いこんでるからダメなんでしょ。ここにもあそこにも、女の人はたくさんいるのよ? 試しに目をつぶって指さしてごらんなさい。いい女がいるかもしれないわ」

「そんな運しだいな選び方できるかよ」

「いいからやって。ほら早く!」


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