ショコラ SideStory
どんな言葉であれ、ちゃんと受け止めよう。
そう思いながら、宗司さんの顔を思い浮かべる。
でも、あたしの脳内に残っている宗司さんの顔って、笑顔ばっかり。
確かに、落ち込んでるときとか怒ってるときとかもあったはずなんだけど、それが記憶に残らないくらい傍にいるとき笑ってくれてた。
こんなんじゃ、別れの覚悟なんてできるわけないじゃないの。
唇をかみしめながら神妙に封を開けると、温かい手書きの文字が迎えてくれた。
【詩子さん、元気ですか?】
さっきまで悩んでいたのが恥ずかしくなるほど、あっけらかんとした語り口で、拍子抜けしたあたしは思わず「何なのよ」と舌打ちしてしまった。
【俺は口下手みたいで、電話だとうまく言えないので、手紙にしました。】
宗司さんの字って、【ま】のカーブに癖があるんだ。いつもプリントはたいていパソコンで作っているし、文字をじっくり見ることなんてなかったなぁ。
【一つ、ご報告があります。電話で伝えた佐伯先生という年配の先生の他に、和美ちゃんがアルバイトに入ってくれることになりました】
「えっ。和美ちゃんが?」
和美ちゃんはマサの彼女で、現在大学の教育学部の四回生。卒論もあるし、就職活動も忙しいんじゃないのかしら。
【教員採用試験の勉強時間をとるために、移動時間が短縮できるうちの塾を選んでくれたようです】
確かに、前に家庭教師は一日一件しかできないから思ったほどの収入にはならないって言ってたな。
塾なら、一日に何時間かできるから、時間短縮にはなるのかな? うまくすればマサとの時間も確保できるもんね。