ショコラ SideStory

 そして連休前夜、少しでも一緒にいる時間を増やしたくて、あたしは二十一時台の新幹線に乗り込んだ。
到着したのは二十三時を過ぎていて、新幹線ホームは比較的人がまばらだ。すぐに迎えに来てくれた彼の姿を見つけて、手を振る。


「宗司さー……」


最後まで言えなかったのは、彼の手があたしの手を引きよせて、呼吸が止まりそうなほど強く抱きしめられたからだ。


「ちょ、そう」

「詩子さんだ。本物」


当たり前でしょ。あなた、あたしの偽物にいつ会ったよ。


「……会いたかった」


頭を撫でられるのって、こんなに嬉しかったっけ。
誰かのぬくもりって、こんなに温かかった?


「宗司さん、あのっ」

「あ、ごめん。もう夜だしね。送ってかなきゃだよね」


慌てて手を離して、あたしの荷物を奪い取る。そのままいつもの調子に戻っちゃいそうな彼の服の裾を引っ張った。


「違う。あたし、父さんと母さんには明日帰るって言ってあるの」

「え?」

「だから今日は、宗司さんのところに泊めて」


やっと言えた。
あまりにもがっついているみたいで、電話では言えなかったこと。

宗司さんは見る見るうちに耳まで真っ赤にして、あたしを二度見する。


「うち?」

「うん。ダメ?」

「まさか、ダメじゃない。でも来るとは思ってなくて」

「……なくて?」

あんまりにも恥ずかしがるから、変な疑いを持ってしまう。
何なの、エロ本でも隠してるの?
別にそれくらいで文句言ったりしないわよ、あたし。

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