ショコラ SideStory


 翌日の昼、『ショコラ』に顔を出すと、親父がいそいそとビーフカツサンドを出してくれた。
昼の人気メニューで、すぐ無くなるから食べられるのは嬉しい。

親父は口元だけは緩ませたまま、冷たい口調で話す。


「全くいきなりなんだからな。お前はいつも計画性が足りない」


せっかく帰ってきたのにぶつぶつ言われるのは心外だけど、マサいわく、「詩子が帰るって聞いてから浮かれて大変だった」とのことなのでまあいいとしよう。


「わあ、本当に康子さんとそっくりですね」


そういうのは、あたしがいなくなった後に入ったバイトの夏目さんだ。
和美ちゃんの後輩にあたるらしくて、丸顔でボブカットが似合うかわいい子だ。火曜と木曜の午後が講義が空くらしくて、そこで入ってくれているよう。


「おーい注文!」

「あ、すみません。今行きます!」


会話に夢中になっちゃう辺りはちょっと経験不足なのかなって思うけど、バイトだものね。

あたしの場所がこうして他の人で埋められていくことは寂しい気がするけれど当たり前のことだ。
時は流れている。新しい場所でつながりができていくということは、今までの場所にも新しい風が吹くということだ。
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