ショコラ SideStory


「ごめんね、詩子さん。また明日ね」


宗司さんはこれからお仕事。
生徒が増えた今はパーティションで区切って二クラスを同時にやっているのだそう。

午後の早い時間は、宗司さんと穏やかな物腰のおじいさん先生・佐伯さんが担当するのだそう。

あたしは一緒に二階まで行き、佐伯さんに挨拶してきた。


「下の喫茶店の娘です」

「そうなんですか。僕もよく利用させてもらってるんですよ」


佐伯さんは顔中に笑い皺を寄せて、人の目をしっかり見て落ち着いて話す。
ちょっとだけ見透かされるような気分になって落ち着かなかった。
すごく“先生”って感じがする先生だ。


生徒さんたちが来る前に店に戻り、手持ち無沙汰からなんとなく店の手伝いを始めた。
と言ってもコーヒー入れたりと裏方仕事だけど、ここぞとばかりにマサが休憩しだしたのが面白かった。


「こんにちは」

「あら和美ちゃん。いらっしゃい」


夕方、入ってきたのは和美ちゃん。


「わあ、詩子さん。嬉しい、会いたかったんです!」

「和美ちゃん、久しぶり。今、宗司さんところで講師してるんだって?」

「そうなんです。今日もこれから。その前にマサさんと話せるかなって思って」


注文を聞く前に、カウンターにはカフェオレが出されている。
ああもうツーカーなのね。いちいちオーダーとらないのね?


「詩子さんが帰ってくるの。皆待ってましたよ」

「ありがと。ホントに帰ってくるのはまだ先だけどね」


でも。
あたしには居場所がある。
そう思えることが嬉しくて、あたしは幸せをかみしめた。


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