ショコラ SideStory


 そうして日々は過ぎる。

 六月には雪音さんが出産した。
生まれた子供は男の子で、玲央さんは大喜びで、文字通り小躍りしながらあたしに報告に来てくれた。あたしはお店を閉めてから見に行ったけど、結構な難産だったらしく、雪音さんは寝ていた。

新生児室にいる赤ちゃんを見ながら、「ほら、鼻筋とか俺に似てない?」なんて早くも親バカぶりを発揮している。

電話でその声真似をしたら、宗司さんのツボにはまったらしくていつまでも笑い続けていた。


 手紙は、二週間に一度くらいの割合で届く。

おじいさん先生の佐伯さんの話、和美ちゃんが勤めてからやたらにマサからの差しいれが多いという話、母さんが、時々店の手伝いに入ってくれているという話。
宗司さん目線で語られる『ショコラ』の景色は、あたしが見ているものと少し違っていて面白い。


 二年前にあたしが考案したフラッペが、今年もまた店に出始めて、宗司さんは早速三日連続で食べたら、お腹を壊したらしい。
 馬鹿ね。そんなにがっつかなくても、なくなったりしないのに。

もうそんな季節かと思いながら、彼と過ごした日々を思い出す。

そこからしばらくは帰省もできなかった。

出産後も雪音さんは意欲的に仕事を請け負うけれど、今までみたいに自由が利かないのも当たり前の話で、結局仕上げのすべてがあたしの方に回ってくることも少なくなかった。

宗司さんの誕生日にも会うことは出来なかったけれど、あたしは婚約指輪のお返しも兼ねて、チタン素材の腕時計を選んで送った。

お盆に一日だけお休みをもらって、彼の帰省についていく。久しぶりに会ったご両親やお兄さんは相変わらずにぎやかで。

「ケンカしたんじゃないかと心配してた」と、結婚話が進まないことを心配してくれていた。
ふたりでちゃんと説明して、そのままとんぼ返りで仕事に復帰する。

バタバタとして、ゆっくりした休暇にはならなかった。


< 418 / 432 >

この作品をシェア

pagetop