ショコラ SideStory
「いつか親父に、頭下げさせたいんです。『店を継いでほしい』って」
言いきったら妙にすっきりした気分になった。
もう、あの店にあたしがふさわしくない、なんてこと言いたくない。
マサが自分で店を開くというなら、ケーキはそこから仕入れることにしてもいい。でも『ショコラ』を継げるのはあたしだけだって思いたい。
だって、あの店は最初から、あたしの場所でもあったんだもの。
「……いいわね。そういう強気、かなり好き」
「ですよね。あたしも雪音さん好きです」
「しゃーない。諦めるわ。でも、二月まではしっかり働いてもらいますからね」
「もちろんです」
ここに最初に来たときみたいに、雪音さんと握手をした。
前ほど雪音さんの手のマメが気にならなかったのは、あたしの手にも、同じくらい固いマメができたからだろうか。
宗司さん、あたし、頑張るよ。
だから待っててね。
一人前の職人になって、ちゃんと戻るから。