ショコラ SideStory
「久しぶり、マサ。ただいま」
「昼からマスター落ち着きなくて。迎えに行けばいいのに店は閉めれないとかいうからさぁ。でも何も手についてないから困ったよ。……マスター、詩子、ようやく戻ってきましたよー」
マサはあたしにカウンターに座るよう勧めると、厨房へと入っていく。
二つ離れた席にいたのは、昔からの常連客の松山さん。歳は三十前後だと思うけどさわやかなイケメンさん。うちの親父のことを「親父」と呼んで懐いている。
「詩子ちゃん久しぶり」
「あれ、マツさん、お元気でした?」
「元気元気。詩子ちゃんがいなくなってから親父の元気ないから、ちょくちょく遊びに来てたよ」
「あはは」
「ホント。心なしかケーキもさえなかった気がするよ。これでようやく今までどおりになるかな。詩子ちゃん、店に戻ってくるんだろ?」
「ええ、もちろん」
「ようやく看板娘がご帰還だ。大変だったよなー、マサくん」
「ホントに、昼時の忙しさったら半端なかったぜ」
厨房から戻ってきたマサが、苦笑しながらコーヒーを入れ始める。
「あれ、バイトの夏目さんは?」
「年末で辞めたんだよ。そしたらマスター、もうバイトは入れないって言ってさ。でもバレンタイン時期とか限定ケーキ目当てで客増えるじゃん。たまに松川さんが駆り出されてたよ」
「宗司さんが?」
そんなこと聞いてないわよ?
「まああの人どんくさいから、グラス割ったり面倒も多かったけどな」
「あはは」
そっか。宗司さんも、あたしの場所、守っててくれたんだ。