ショコラ SideStory
* * *
そして、一年後。
最近連日のように、ギフト用のアイシングクッキーを仕上げているあたしは、昨日、特別なクッキーを作り終え、今は鏡の前で固まっている。
「元の顔がはっきりしているから、あんまり濃いとケバくなるよね」
なんて言いながら、頬にチークをのせていく女性は三輪さんという式場のメイク係さんだ。彼女の結婚式の時にも、あたしはプチギフトにクッキーを作った。
何か反論しようとしても「動かないで」と言われてしまうので、ただいまのあたしはお人形さん状態。
最後に口紅とグロスをのせ、ようやく解放してもらえた。
「よし、美人完成! 髪もメイクも完璧」
「三輪さん、これでも化粧薄いにはいるんですか?」
「少しくらい濃くないと、高砂で映えないのよ。ライトも当たるしね、主役なんだから目立ってもらわないと」
そう。
本日はあたしと宗司さんの結婚式だ。
鏡に映る真っ白なウェディングドレス姿の花嫁が自分なことがなんとなく信じられない。
準備をしているときは気持ちが高揚していたけど、いざ当日になるとこんなものなのねぇって感じ?
「そろそろ用意できたかしら?」
ひょうひょうとした声で控室に入ってくるのは母さん。
黒留め袖を着込んで髪型も母さんにしては地味にまとめているけど、この人が入ってくると人目がそっちにいってしまうのは生来人を惹きつける何かをもっているからなんだろう。