ショコラ SideStory
ドレスに見とれて物思いにふけっていたら、不意に母さんが優しい声を出した。
「詩子……ありがとね」
「何よ、急に」
「私、自分が親不孝なことしてるからね。絶対子供にも仕返しされるだろうって思っていたけど。……あんたは私を喜ばせてくれるばかりだわ。ドレス姿をみせてもらえる日がくるなんてねぇ」
母さんが神妙な顔をしてあたしを見つめる。
この人にいつもの勢いがないとなんか変な感じがしちゃう。違うでしょ、母さんはほら、いつだって自信もってあたしの前を歩いてくれてたじゃない。
それであたしも、母さんみたいな生き生きした女性になりたいって思えてたんだから。
「気持ち悪いよ、母さん。こういう時はそういうんじゃないでしょ。ほら見てよ、あたし結構綺麗じゃない? それもこれも……」
「私に似たからよ」
しれっと言う母さん。
「そうそれ! 綺麗に産んでくれてありがと」
うん。やっぱり母さんはこのくらい自信満面でいてくれないと。
「……それ言って嫌味にならない親子って嫌ですねー」
三輪さんが呆れたように言うから、あたしたちも顔を見合わせて笑った。
普通の親子の会話じゃないかもしれないけど、これがあたしたちらしいって思うんだ。