ショコラ SideStory
「ありがと。いいこと聞いちゃったわ」
「はは。じゃあすみません。お先します」
「お疲れ様」
小走りに走っていくマサくんを見送ってから中に入ると、カウンターには隆二くんがスタンバイしていて、そこには湯気の上がったコーヒーが置かれていた。
「何話してたんだ?」
「別に? 世間話よ」
「マサと?」
すぐ嫌そうな顔をするんだから。
「ねぇそれより見て、これ」
「なんだ?」
「私が担当してる雑誌の最新号」
「へぇ」
隆二くんは雑誌を受け取ると長い指でペラペラとめくる。
私はコーヒーを頂きながら、話し始めた。
「『デキるOLのこだわりの一品』ってページあるでしょ、そこのね……」
「ああ、これか。……あれ、これマツじゃないか」
「え?」
予想外の一言に思考が一時停止する。
誰だって? マツ?