花蓮【完結】
「それ着てて」


「え?哲が死ぬよ?」


「ふふっ、俺は走ったらあったかいからー!」







そのセリフはあたしが初めてここに哲と来た時、哲から逃れるために言った苦しい言い訳。

それを今言うなんてずるい。









「麻美!」











遠くにいる哲があたしを呼び捨てにする。



不覚にもそれに胸が飛びはねそうなぐらいドキンとする。







哲の匂いがする上着を、羽織ってるもんだから哲に抱き締められてるんじゃないかって錯覚を起こす。


まだ温もりを残すそれを、強く握り締める。









「俺はお前が好きだ!」




顔も薄暗くて見えないのに真っ直ぐあたしを見てるのがわかる。



口を噤んだまま、あたしはその告白をただ黙って。



だけど、一言も聞き漏らさないように耳を澄ます。








「絶対幸せにする!」








哲の一世一代の告白だったと思う。


あたしだってそんな告白を受けるのは初めてだった。
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