二重人格神様




「……あ」



大きい身体に腕を組む人影とうずくまり泣いている小さな人影



あれは…海鈴さんと、グレン君?


こんなところで、何をしているの?


てか、なんでグレン君が泣いているの?


泣くグレン君とは対照的に海鈴さんは顔は見えないもの、グレン君を見下ろしている




まさか、海鈴さんがグレン君を泣かしたの?


「………っ」


顔を隠しながらただなき続けるグレン君に胸が痛む


グレン君……


ギュウと手を握り、二人の元に近づこうと脚を踏み出した瞬間―…



ガシッ―…


「…え?」


「いけません、いのり様」


伸びて来た手に腕を掴まれ、そのままアレスと視線が絡む


「アレス?」


「いのり様、戻りましょう」


「え?でも、グレン君が…」


「駄目です。屋敷の中に行きましょう」


「あっ、ちょっ」



何かを焦っているのか、アレスは私を見ずにグイグイと手を強引に引き私は引きずられるように歩きだす


「アレスっ」


な、なんで、駄目なの?


「アレス、離して!」


「………」

「アレス!」



あんな場面、目にして無視なんか出来ないよっ


声を押さえて、海鈴さんに見下ろされながらなくグレン君の姿はひどく胸が痛む


泣いてる子を…見て見ぬフリなんか私には出来ないし、したくない



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